夏の友

宿題

小さなあたたかさ

去る3月、nano.RIPEのライブツアー「ハナアカリ」に行ってきました。どう考えても去りすぎや。 あの日は寒風吹き荒ぶ日でした。午前中には吹雪いていました。3月とは思えませんでした。会場だったElecrtic Lady Landは大須観音駅の2番出口から歩いて3分ほどのところにあります。あの近辺、大津通り(だったっけ)の車の往来が激しいために、体感温度もかなり下がるのです。冬は結構身に沁みます。そんな日に、ライブに参加しました。

この名古屋公演、実は最終日になる予定でしたが、きみコさんがインフルエンザのために大阪公演が延期になったためにちょうど折り返しの日になったのでした。その意味でも、特別感があったような気がします。

先に中身を言ってしまうと、これでもかというぐらいnano.RIPEのいろいろな色があふれ出ていて、それを直に受け取ることができて胸いっぱいでした。始終泣きそうになっていました。 開幕の「ウェンディ」のイントロが流れた瞬間、何故か帰ってくるべきところに自分は今いるんだ、のような気持ちになって、涙がじわーっと溜まっていく感覚を覚えました。不思議です。この会場ELLも、nano.RIPEのライブも初なのに(ついでに言えばライブ自体これで人生3回目なのに)、自然とそう思えてしまったのでした。「なないろびより」も良かった。曲単体ですらなんとなくノスタルジックな気分にさせてくれるのに、そんな心もちでは当然ぐっと来てしまいます。初っ端からこのバンドの力を感じたのでした。

nano.RIPEの魅力と言えば、やはりその詩の世界でしょう。きみコさんの目で捉えた世界が、まっすぐに心に刺さるのがとても印象的です。 ライブに参加するまで、彼女のブログを見ることはほとんどなかったのですが、それ以来ちょこちょこと尋ねるようになりました。アルバムのリリースに伴って曲の解説やそのバックグラウンドだったりが載っていたり、日常の景色を見せてくれています。 率直に言って僕はこの世界が大好きです。ありきたりなものにもたれかかるのではなくて、思ったことをできる限り鮮やかに描こうとする姿勢が大好きです。まったく同じ理由で椎名林檎さんを尊敬しているわけですが、その世界とは当然違います。林檎さんはどこか気取っているというか、おそらくありきたりなものが好きではなくてわざと回りくどく表現していると僕は思っています。きみコさんはそうではなくて、頭に浮かぶ時点ですでに、既存の型に嵌められない形になっているような気がしています。そしてそのワードがとても脆くて、芯が通っていて、とても暖かい。それがこのバンドの原動力になっていると思います。ライブの曲の合間に詩が流れるところもあって、一層心に響くところもありました。

ライブの半ばではアコースティックパートがあって、アルバム「涙の落ちる速度」収録のバージョンで何曲か披露されました。ガンガン攻める曲もいいのだけど、柔らかい音色が歌詞にぴったりと寄り添うのがとても良いです。 歌詞のことばかり褒めてますが、演奏ももちろん良かったです。あまり技術的なことを語る術が無いのがもどかしいのですが、「マリンスノー」は特に凄かった。アルバムを聴いた時に一目惚れした曲なので気持ちも一入ですが、あのリフを生で聴けたのは感動でした。どこかでインタビューで「難しいからしばらくは披露できない」的なことが書いてあった気がするのですが……何も問題ありません。素敵です。

会場は結構狭くて、しかしそれが幸いして、皆で聴いているという感じが非常に強かったのも印象的でしたね。客が結構挑発的(?)なコールを飛ばすせいでヒートアップしているところもあり、またかけあいのところを先取して「まだ何も言ってないのに……」と苦笑されるところもあったり。「タキオン」は皆で歌いました。すごく気持ちよかった。最後、「本当は会場のみんなひとりひとりと手をつなぎたい」ということで皆で手をつなぐシーンもありました。そのお陰で綺麗なおねいさんと手をつなげたぜ。へへ。

少し話は遡って、アンコール前のラスト曲は「ハロー」でした。この曲はここまでのバンドや、この公演を象徴しているような気がしました。口上で述べられていた思いは、短く見ればインフルエンザでの休演なのかなとも思い、また長い目で見ればこうやってバンドが続けられていること、生きていることすべてに係わるように感じました。歌が涙に濡れるシーンもあって、思い返すと今でも涙が出そうになります。僕個人的にも、この曲はこの先の道しるべになる曲の一つになった気がしました。

セトリが出せないのが悔しいですが、なんとなしに最近の曲を聴いていると、瞼の裏でまたあたたかいライブが行われているようにも感じてしまいます。できればライブのDVDも出してくれるといいなあと思っていますが、その脳内再生だけでも充分心に響いてくるので、まあいいかなとも思います。いや、出してくれるなら買います。 今年の秋から冬にかけてもまたツアーがあるようです。都合をつけて絶対行きます。これからも応援します。