夏の友

宿題

4月15日(水)はれ 穏やかな春の日

午後六時、半年前なら非常識な時間に退勤してドラッグストアに寄った。少し意識高く化粧水などかごに入れ、職員室のコーヒーのお供にといつも買う牛乳、たまには弁当を取らずに偏った昼食にしようとレトルトカレーをまとめ買いした。マスクが品薄なのは百も承知、だけどそういえば半年前にはマスクがどの棚に置かれていたのだろうと首をひねる。

1ヶ月半前から生徒に会ったのは合計2回。2回目の担任の締めくくりもろくにさせてもらえず、そして3回目、初めての3年生担任の挨拶もままならず、今に至る。大人ばかりの学校に何のやりがいがあるのかと薄ぼんやりと思う。その何となく意識の表層にもそのぼんやり加減は浮かんできていて、春霞のように感覚を鈍らせている。「この先、どうなるだろう」なんて、問い続けても答えが出ないから何も言うことはなくなった。本来なら、3年生を最後のインターハイに向けて鼓舞させながら進路に脅しをかけていたのだろうな。

志村けんが旅立った。個人的に志村けんイチローと同じように、敬意を持って呼び捨てできる人だと思う。ここ何年か、語弊がありまくるが、変なおじさんになりたいと思っていた。詳しくないが僕はかなりのファンだった。俳優としての姿を見たかった。事が落ち着いたら、何らかの形できちんと合掌しに足を運びたい。

ドラッグストアの酒の棚に目を取られる。小さい頃、健康に悪いはずの酒が何故薬局にあるのか親に尋ねたことがあるような気がする。今は昔だ。目新しく映ったサントリーのジンを手に取る。新発売のジン、翠という。和のボタニカルを使った、食事に合う酒らしい。買おうかと心が傾くが、そういえば家にまだボンベイサファイアが残っていたことを思い出す。初めてのジンは思ったよりも柑橘系の芳香が強くて、毎日とは行かなかった。まずはそれを飲んでから買おう。買うその日まで、待ってろ。

 

久しぶりに酒を飲んだ。ボンベイサファイアはやっぱり柑橘の香りが強く、そして割と強く来た。強い酒を呷っても、僕は気心が知れた仲間と共にするのがいいなあと思いながら、琉球ガラスのグラスを回す。そういえば2回目の修学旅行、これも半年前だったな。

学級通信のために、敷地内の牡丹の花を撮った。穏やかな春の日だ。赤く一輪誇らしげな牡丹も、校門に至る道の桜の並木も、今年は何人が見たのだろう。正午、真っ青な空を仰いだ。